酒問屋の寮に住み込んでいた。
入居当初、社長の娘夫婦が暮らしていた
2階の部屋をあてがわれた。
部屋は、緑色の絨毯が敷かれていて、オンボロな
建物と不釣合いな清潔さがある。
ソファーで、反っくり返る社長は、唾を飛ばしながら
「きみは、若いから頑張ってもらわないといけない。
だから、娘の部屋で生活してもらいますよ。」
と、ガハガハと笑う。
つづく
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仕事が遅くなり、辺りが暗くなった頃
駐車する車から、寮の、自分の部屋の窓を
観る。黒く街灯を反射する窓の向こうに、白い
影が映っていた。
車の音を聞いた、1階に住む若夫婦の友人が
声を掛けてくる。
「遅かったじゃないか。」
窓を見上げると、白い影は、消えている。
「社長の娘さん、来ているのかな?」
「え?なんでだ?」
「自分の部屋の窓に、白い影が見えたんだ。」
「おい、幸子。社長の娘さん、来ているのか?」
驚くほど、髪のぼさついた奥さんは
「そんなことないと思うよ。だって、いつも
来るときは、あたしに声を掛けるから。」
「部屋の鍵を掛けないのか?」
「部屋には、鍵がないよ。」
「泥棒が入ったか?」
「貴重品やお金なんか置いてないけどね。」
奥さんは
「どうする?警察へ電話する?」
「まずいだろう・・おれが一緒に行ってやる。」
つづく
途中で行間を空けてくれると読みやすい
行間の改稿、了解しました。
ろくろ回すか。
そう言うと、友人は
自分の部屋からバットを持ち出す。
友人は、玄関の踊場から2階への階段を見上げ
大きな声で叫ぶ。
「おい!おれに、殴られたくないなら早く
出て来いよ!」
その声に驚いた、寮のみんなが顔を出す。
「どうしたんだ?」
友人は、階段を上がって行く。
「泥棒かもしれないんだ。」
「え?泥棒?」
友人は、自分の部屋の扉を、勢いよく開ける。
しかし、部屋には、誰も居なかった。
2階の他の部屋も探したが、誰も居ない。
そして、その夜のことだった。
つづく
映画にしよう
舞台をNYに移してヒロイン役はウィノナ・ライダーなんてどうだろう
友人夫婦の部屋には、娘と、タマという
猫がいる。
タマは、黒毛のまだら模様で、友人が面白半分に
エサをあげていたせいか、ずんぐりと太っている。
やけに、人なつっこく、それでいて、ちょっかいを
だすと、歯を剥き出して怒る。
就寝しようと台所で歯を磨いていると、気配から
振り返ると、そこに、タマがいる。
部屋の扉を閉めていると、扉をガリガリと引っ掻き
開けろと催促して以来、いつものように、半開きし
た扉から入って来たのだ。
しかし、タマの様子が変だった。
窓の一点を見つめ、ジッと動かない。
声を掛けても、動かない。
顔を覗き込むと、視線が何かを見つめている。
「何を見ているんだ?」と視線の先を見るが
何もいない。
ただ、ジッと見つめていると何かの気配がして
いるように感じる。
つづく
続き早く
車両の盗難を避けるため
寮の駐車場には、何個かの街灯が闇を照らしている。
窓ガラスに、反射する光の影が、動いたような気が
する。
タマが「ニャー!」と哭く。
タマを振り返ると、タマは、自分の肩の上あたりを
見つめている。
「ふふふ・・」という声が耳元で囁く。
「え?」
と思うと、なぜか、全身の肌が泡立つ。
つづく
子供の頃、ゴキブリを手で捕まえようとした。
カブトムシみたいに、黒光りした虫が興味の対象
だった。
「捕まえちゃだめよ!」と母に、手を叩かれる。
「この虫は、怖い病気を持っているの。
カブトムシやクワガタじゃなの。」
と、ゴキブリが、小児麻痺を介在する生き物で
あるのを説明した。
それ以来、自分の生存本能からか、強い恐怖が
ゴキブリへ伴なうようになった。
それは、死への恐怖と並行していた。
つづく
寮の隣にアパートがあり
そのアパートの2階の一室で
ひつり暮らしの若い女性が自殺したと聞いた。
どんな理由から自殺したのか想像するしかないが
人が死ぬと、想いはカタチとなって残るのかも
しれない。
死が安楽の境地であるのか
それとも、現世の想いを引きずった間々
苦しみ続けるのか
どう考えても、後者の現実が用意されているような
気がする。
あれ以来、自分の部屋には、幽霊が住み着いている。
夢の中へ現れたり、金縛りになったりする。
その度に、頭の中や声に出して語り掛ける。
「きみは、何をしてほしいんだ。」
つづく
「最近、顔色が良くないぞ。」
と友人が言う。
「自慰をし過ぎると貧血になるぞ。」
タマが自分の布団へ潜り込み、勃起した
アソコを舐めて射精したことを話すと
友人は笑いながら、
「バター犬じゃなくて、猫かよ。
そういえば、このまえ、タマはネズミを咥えて
いたぞ。」
友人が言うには、猫の舌はザラザラしていて
気持ち良いのと、イカ臭いアソコをカジラレルと
病気になる・・って、どんな病気だったんだ?
それより、経験者か?
つづく
社長の娘が遊びに来た。
色白で、どこか、自分が女であることを
恥じているようなところのある女だった。
旦那は、かなり年上で、何処で知り合ったのか
想像すると、酒の勢いからか、それとも見合いかと
想ってしまう。
社長なら見合いも、胸算用とも想うだろうし
それよりなにより、娘は発情している。
一度、寮の玄関で自分の名前を呼ばれ、娘の
胸のはだけた、ミニスカートの姿を見たとき
想わず勃起して、娘に笑われたことがある。
つづく
目的が何であったのか、問うことが必要だ。色々な
状況の中で、自分が前向きであると信じるものが
選択を強いている。
行動の理由が、それ自体、矛盾していても
正当を要求するのは、選択故であるだろう。
しかし、必要なのは、存在の根幹へ答えるもので
あるのは確かである。
自己の疑問へ答えることだ。
組織や人の関わりと、自己を結ぶのは、そうした
価値への自己判断だと理解していた。
ある日から、幽霊と会話するようになる。
幽霊も、元は人なのだ。
死後の世界が、想像できないだけのことだろう。
しかし、想いは、一貫している。
幽霊とは、夢の中で、セックスをした。
実際は、タマが手助けをしたが、それより
異性の残像が快楽を刺激していた。
死を選択した者へのレクイエムが、生きている
者へのものとならなければ、死は、淘汰に過ぎない。
だから、幽霊の彼女を愛し始めていた。
「卵が先か、それともニワトリが先か?」
それを対象して、「何が現実化?」
考えるとしたら、問題の提議の選択は
「何をすべきかを問う行為ということ。」
卵が先であれば、親を否定し
親が先であれば、子を否定する。
そうした考え方は、構造主義を擁立する。
もちろん、生存の成否を問う疑問に対してで
ある。
しかし、疑問は、生存としての理由である。
何故、生きているのか。
何故、生きようとするのか。
また、自分に対し答える心情的な、「幸福」への
イメージでもあるのだ。
面白いです!!
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ぜんぜんおもしろくねぇよ
幽霊はタマを借りて
フェラティオをする。
猫の動機がイカの臭いからだろうと
想いながら、鋭い牙が傷つけるのを
恐れる。
そうした、タマの舌を見ていると
自分の馬鹿さ加減に驚くのだ。
「私は、生まれるべくして生まれたんじゃない。
誰かが、私を導いたのよ。」
「自殺したのも、誰かの導きだと言うのか?」
「失意が私を盲目にした。」
「神を怨むのか?」
「・・・・」
身体の何処からか怒りが込み上げる。
手の平で、怒りの気が青白く光る。
「生き物へ死を与えるのは、生き物だ。
しかし、それは、生き物の道理じゃない。
生き物以外の存在になることだ。
否定が、生き物を拒否する。
・・であれば、僕は生きているよ。」
青白い光の手で、タマを抱く。
毛が逆立ち、瞳孔が開き、恐怖から威嚇する。
タマは、逃げて行き、霊が抜け出る。
「さあ、おいで、僕の中へお入り。」