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[0] 名も無きザビラー@ザ掲示板 2016/07/12 02:08 4V/fhhAiENI

スローペース。

5件のコメント 1番から5番を表示中

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[1] 名も無きザビラー@ザ掲示板 2016/07/12 02:10 4V/fhhAiENI



ふと、ぼくが眠るとき。
遠くに聴こえてくる旋律は懐かしさと切なさのセピア色。
全てを壊してしまって、全てを受け入れてしまって、ぼくはようやく眠りにつくことができる。
楽しい夢をみて、二度と覚めることはない。
逢いたかった人も、逢えなかった人も、みんなが居てくれる場所にぼくたちは夢の中で巡り会う。
指を組み、静かに鼻歌を添えてその歌を最後まで聴き届けたい。
もう思い出せない君が好きだったような気がするこの歌を、聴いたら君のことも思い出せるような気がしたんだ。

どうしてこうなってしまったのだろう。
どうしてもこうなってしまったのだろう。

きっと君は許してくれる。そう思う。

もうぼくは必要ない。
ここはもう何もない。

全てを壊してしまって、全てを受け入れてしまって、ぼくはようやく眠りにつくことができる。
目を閉じれば蘇ることもあるけれど、それも幻に溶けていく。

もうぼくには必要ない。
ぼくにはもう何もない。

[2] 名も無きザビラー@ザ掲示板 2016/07/12 02:11 4V/fhhAiENI

果たされた約束が因果を駆けて全ての柵はぼくのものになる。
果てに、見ゆる微かな希望と絶望の交差がぼくを照らして痛める。
果たされなかった約束が宙を舞って全ての憎しみは無に帰る。
初めに見たものを感じ、触れてぼくはやがて消えゆく肉体を捨て深い眠りにつく。

夢の中で君に逢おう。
夢の中で君に逢おう。

時計の針が止まっても直す必要はない。
君との時が止まっても直す必要はない。
進まない未来は永遠に。
齎される幸福は残酷に。

夢の中でぼくを許して。
許して 許して 許して。

ふと、ぼくが眠るとき。
遠くに聴こえてくる旋律は懐かしさと切なさのセピア色。
全てを壊してしまって、全てを受け入れてしまって、ぼくはようやく眠りにつくことができる。

夢の中で君に逢おう。
夢の中で君に逢おう。

果たされなかった約束を 君に返そう。

[3] 名も無きザビラー@ザ掲示板 2016/08/23 00:19 VW/fhhAiENI

2016/03/28

そこは学校のようだった。付け加えて述べさせてもらうと一般的な高等学校に老人福祉施設が併設しているような場所だ。だから、施設内では規定の制服を着た生徒とスーツ姿の教師、ポロシャツかエプロンを身につけた介護士に老人が同じ廊下を歩いても何ら不思議なことではない。
「おい、聞いているのか!」
傍で男性の声がして驚いて振り向くとそこには教師がぼくを睨みつけていた。ぼくは窓から中庭を挟んだ別館を眺めていたままの惚けさで
「はあ…」
なんて口に出してしまった。するとみるみる教師は変貌し、真っ赤になった頭が膨れ上がって飛び散る。ぼくはそれさえも茫然と見つめ、恐怖すら追いつかない。
「くそ、くそ、くそ、くそ、」
確か、こんなことを言っていた気がする。頭のない男性からは血が噴き出すこともなく、単調に言葉が紡がれている。襟から生える首はまるで電球の口金だ。
「早く謝れ、早く、謝るんだ!」
隣席から何か聞こえたがぼくはそれどころではない。跪いた男性の首にぽっかりと空いた穴がヘッドの取れた掃除機のように空気を吸い込み続ける。微かに浮いたプリントを抑え、ぼくにも漸く恐怖が湧き上がってきた。しかしながら、見入った闇から目を逸らすことはできない。じっとりと冷たい汗が背を伝うのを感じつつ、徐に告げた。
「先生、授業終わっちゃいますよ」
え、ぼく今なんつった?
謝ろうと思い、だが開いた口から出たのは明らかな挑発。その間もくそ、くそとぼやき続ける彼は微動だにしない。ぼくは焦って今度こそと固く決意した上で再び口を開いた。
…そのときだ。
彼は黙り込んで、ぼくも吸った息を静かに吐いて様子を伺う。
数秒の沈黙にびゅうびゅう口金に空気が食われていく音だけが響いていた。
ガタガタガタガタ…
突然、教室中の椅子が暴れ出す。そこにはぼく以外の子供の姿はない。
あぎゃぎゃ、だか彼が叫ぶ声がやけに遠くで聞こえた。そんなことよりぼくの視線は、耳は、椅子に夢中だった。
「ぎぃいいいいいいいいっ!!!」
食い縛った椅子の悲鳴が頭のない絶叫に重なる。椅子は、アイアンメイデンだった。否、正確には違う。ただぼくの脳裏には鉄の処女が浮かぶくらい、雰囲気は近い不気味な顔が椅子に浮かび上がり、奇声を発しながらいくつも…いくつも、ぼくに詰め寄ってきたのだ。
…声が出ない。
ぼくは悲鳴をあげるのも忘れて、背後に立つ口金なんて気に止める余裕などなくアイアンメイデンと見つめ合っていた。
逃げなければ…
腰が抜けてる。だが確かな身の危険に奮い立つより他は死だと直感した。
ぼくは泣き出しそうになりながら机を蹴飛ばし、立ち塞がる椅子の上を駆けて一目散に教室を出た。そのまま足を滑らせながら向かったのは別館にある職員室。教師と介護士が集う部屋。
閉め忘れた教室からぼくを呼ぶ友人の声がした。それにより一層ぼくは恐怖に浸り階段を駆け下りる。ガタガタと震える扉の前を駆け抜けて急ぐ。職員室が安全かなんて考える間はない。
ガラガラッ
ノックもせずに飛び込んできたぼくに視線が集まる。授業のない先生と事務中、待機中の介護士たちの視線。ぼくは言わんとしたことを忘れ、へなへなとへたり込んだ。彼らには、頭があったから。
「…どうしたの?」
不意に問い掛ける声があって、条件反射でそちらを向くとそんなぼくを覗き込んでいたのは顔の輪郭に沿って綺麗に切り揃えられた黒髪を持つ女性だった。服装で教師ではないことが分かる。

[4] 名も無きザビラー@ザ掲示板 2016/08/23 00:24 VW/fhhAiENI

ぼくは混沌とする頭の中をどうにか整頓しようと努めながら先程の先生の話だけを彼女に述べた。…椅子のことは、とても言葉にならなかった。
「そう…」
やがて話し終えると職員室中の関心がぼくに向けられていることを自覚して、少し恥ずかしくなる。普通、あんなことはあり得ない。ぼくは段々教室での出来事は白昼夢だったのではないかと思い始めた。
しかし、そんな呑気な思考は彼女の言葉にすっかり消えてしまう。
「動く椅子を見たことがある?」
心臓が飛び跳ねた。右手が激しく揺れている。痙攣を隠すように左手で右手を握り締め、脳内に浮かぶアイアンメイデンを振り払おうと別に思考を飛ばそうとしてみたものの、より鮮明に彼らを思い起こしてしまうだけだった。
「…人の顔がついた椅子が叫びながら迫ってきた。」
だらだらと冷たい汗が全身に伝う。彼女には心当たりがあるようで、ぼくを気遣いながら立たせると職員室中の椅子を排除すると言い出した。椅子を出せば解決するとは到底思えないが椅子が怖くて堪らないぼくからすれば意図は分かりかねても彼女の意見に賛成だ。
その場に居合わせたぼくも手伝うことになり、すぐに作業に取り掛かった。職員たちも協力してキャスター付きの椅子を一つ一つ別室に運んでいく。僕は室内から扉まで運ぶ役割をこなし、作業に熱中している間はアイアンメイデンも破裂する頭も脳内から消えていた。徐々に落ち着きを取り戻し、この異常環境に順応してきていたのだ。
「これでラストっす。」
そう声をかけ、最後の一つ…入り口から一番遠い席、口金になった彼の椅子に手をかけた時だった。
カタカタカタカタ…
手にした椅子は小刻みに震え出し、驚いて手を離し尻餅をついていたぼくに背を向ける。…と、震えが止まった。しかし再び跳ね上がったぼくの心臓は痛いくらい早く脈打って上手く呼吸ができない。
椅子の背に小さな突起が現れる。それは見つめるぼくの方に…つまり正面に向かって、少しずつその正体を露わにしていった。
あの顔だ。
顔はゆっくりと瞼を持ち上げてギロリとぼくを睨む。随分前からぼくの体は動けずにいたがそれは今も変わらない。
「ゔゔううううううう!!!」
今度の椅子は低く唸りながらぼくににじり寄ってきた。ぼくは手をついて後ずさりながら彼女の名を呼んだ。
「ササメさん!ササメさん!!」
何度か叫ぶと彼女が駆け寄ってくるのが見えた。一緒に作業していたはずの職員たちは見当たらない。
「早く!!」
またも彼女はぼくの腕を持って立たせ、覚束ない足取りを無視して走り始めた。廊下に出した筈の椅子たちは職員室からわんさと湧き出てくる。…勿論、顔付きで。
ぼくは振り返り、そいつらに睨みつけられると失禁しそうなほど脱力してしまう。彼女の腕がなければ、再びへたり込んでいたことだろう。
「振り向かないでっ!」
彼女が声を荒げる。ぼくは何も答えないまま前を向き、一人の老婦人を見つけた。老婦人もこちらを向き、ぼくの後方にて迫る椅子たちに気を失ってしまった。しかし介護士である彼女は気づいていない。ぼくは彼女の手を振り解き、通りすがる最中に老婦人を抱き上げた。普段は机も運べない非力が、火事場の馬鹿力か軽々と老婦人をお姫様抱っこのような形で抱き上げて、気づくと駆け出していた。半泣きになりながら必死に彼女の後を追い駆けて次第に椅子の呻きが遠くなる。永遠に続く廊下は走っても走っても階段に辿り着かなかった。
「くそ、くそ、くそ、くそ、」
聞き覚えのある憎しみの声。思わず、ぼくは振り向いてしまった。そこに椅子の姿はなく、ぼくの後ろにはぽっかりと空いた暗い穴が広がっている。ぼくが背後の闇に気を取られていると突如、首に激痛が走る。目を向けると先程抱き上げた老婦人が鬼のような形相でぼくの首を絞めていた。老婦人の顔がみるみる赤くなり、そのまま膨れ上がって破裂した。ぼくの足は止まっていた。
「くそ、くそ、くそ、くそ、」
口金になった老婦人の声が重なる。ぼくは気が遠くなってぼやけた視界がやがて…消えた。深い闇に取り残されたぼくは何も見えないが何も感じない訳ではない。闇の中でぼくの体を押さえつける力。それに反発し、大きな手から逃れると点のように見える小さな光に向かって駆けた。息を切らせて踏み込むと光は確実に一歩…また一歩、近づいて行く。だが何故かぼくはその光に近づけば近づくほど痛くて堪らない。関節に砂を混ぜられたような痛み。強くなる痛みに泣きながら走る。と、それが親指の爪ほどに近づいたとき、ぼくは気がついた。それはこの不快な闇の出口ではなかった。
首の上から豆電球が輝くスーツ姿の男…それが刃物を持ってこちらに向かって駆けていた。
「くそ、くそ、くそ、くそ、」

[5] 名も無きザビラー@ザ掲示板 2016/08/23 00:29 VW/fhhAiENI

木霊する声はあちこちから響く。
ぼくは踵を返して駆けた。視界の端が明るい。離れようとしているのに強くなる痛みにぼくの心を諦めが支配する。
ぼくがその歩を止めると同時に豆電球男はぼくの上に重くのしかかってきた。首を絞める手は老人のようだ。腹には刃先が当たっている。
チカチカ点灯する明かり。その光はやがて赤くなり…割れた。
その破片が飛び散るより早く、それから逃がすようにズルズルと再び現れた大きな手がぼくを掴んで引き摺る。
ぼくはその手を知っていて、今度は逃れるどころか身を委ねていた。身を瞑り、夢が覚めていくような感覚。
ぼくが再び目を開けたとき、ぼくは駆けていた。左手にはササメさんの手。ぼくは永遠の廊下を椅子たちの呻きを聞きながら走っていた。もう、振り向かない。
「振り向かないでっ!」
彼女の声に驚いて口を開きかけたとき、
「あ…!」
目を疑った。一人の老婦人が廊下の壁に背をつけてこちらを睨みつけていたのだ。…頭はない。口金が、いや電球、口金、電球、いくつものビジョンがぼくの中を掻き乱す。ぼくはこの情景を何度も見たことがあった。ときには口金が…ときには電球が…オーバーヒートしたぼくは頭が熱い。みるみる視界が赤くなり、それが重ねたカラーセロハンのように濃くなっていく。ずっと、前だけを見ていたササメさんが振り返ってぼくを見た。そして彼女のギョッとした顔を最後に、ぼくの頭は引き千切れるような痛みを伴って、弾けた。

「くそ、くそ、くそ、くそ、」

ぼくは誰とも知れぬ誰かに言い続ける。こんなことになったのも全部、アイツのせいだと呪いながら。

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