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[0] 東京童夢 2007/11/16 19:16


---主が書いてます。
  オチはくだらないですだ。
  期待しないで下さい!!
  コメディーです。---

-転校生-

「転入生来るんだって?」

朝の教室。まだ5月なので、春の涼しい風や陽気がとても心地よかった。

2−Cの面々が今噂しているのは、どこからか流れてきた「転入生」情報だった。

全員、その話題で持ちっきりだ。
中心核の男子、女子はもちろん、普段あまり喋らない静かな生徒まで、
他の話など忘れてしまったかのように話題の転校生の話をしていた。

彼らがこんなにも食いつくのは無理もない。

この桜崎中学、とても辺鄙な土地にあるため転出はしょっちゅうだが転入となると
4、5年に1度の奇跡なのだ。
それだけ、場所が田舎ということ。
夏は暑いし冬は寒いし。

46件のコメント 1番から46番を表示中

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[1] 東京童夢 2007/11/16 19:17

自然が多いのが都会っ子達には羨ましがられる唯一の点だが、地元の彼らにとってはそれは虫は多いしデパートなどの事情は悪いし駅も遠いしで不便なものばかりであった。

そんな感じで、こんな所に転入してくるなんて世迷いごとは
疎開しにきたのではないか、と思われるほど。

「おーい!俺転入生見たぜ!」

乱暴にガラリと扉が開け放たれ、坊主のいかにも田舎中学生らしい男子が高らかに宣言した。

自分だけしか知らない情報なので、彼は嬉々とした様子だ。

「うっそ、ホントに!?」
「どんな感じだった?」

「それがな、」

女子、という識別はついたらしい。
だけどその男子生徒、室井は顔はよく見えなかったというので
情報の足りなさに少なからずともイライラしていたクラスメイトらから集中攻撃を浴びてしまった。

[2] 東京童夢 2007/11/16 19:17

「何だそれ!おめぇ、それ見てなかったら意味ねーだろーが!」
「そうだよ!」
「ホントは見たなんてうそなんじゃないの!?」
「何だと!?」

カッとなりやすい性格の室井は、疑いを持つ一同を跳ね返した。

「ほんっとだって!見たんだよ、女子だ女子!セミロングで、眼鏡かけてた!」
「眼鏡?」
「眼鏡っ子なの?」

「へぇ、可愛いのかなぁ・・・」
一人の女子が、思い浮かべるように言った。

[3] 東京童夢 2007/11/16 19:18

「おーい、席につけぇー」

ドアが開いたかと思うと、担任の戸村が顔を覗かせた。
廊下側の窓から、人影らしき影が見える。

──あれが、転入生か…。

どんな子なのか。

全員の緊張が、一気に高まった。

「えー、突然だが転入生の紹介をするぞ」

戸村がベタに教卓に手をついてクラスを見渡す。
もっとも、突然でもなんでもないが。

それは風の噂でとうに知っていた事だ。

「君、入ってきなさい」
戸村の合図と共に、田舎らしい制服(セーラーだが)を着た女子生徒が
慎まし気に教室へと足を踏み入れた。

[4] 東京童夢 2007/11/16 19:18


全員の目線が、彼女へと注がれる。
女子生徒は、入ってきて戸村を押しのけるなりこう言った。

「初めましてー、工藤美紗子ですぅ。東京からきました!よ・ろ・し・く・ね!!☆」

ポカン、と。皆が皆、呆気にとられたのは言うまでもない。

誰も、拍手も何もしなかった。

「よろしく!」の声さえも掛けなかった。
気まずい雰囲気が、教室を覆う。
さわやかなつむじ風がひゅぅーっと開いた窓から入り込んで空中を舞った。

「……よ、よろしくね!」
調子を取り戻したいと思ったのか、その工藤美紗子という女子生徒は再び満面の笑みを浮かべた。

思い出したかのように、パラパラ、小さい拍手が鳴ったが、それも段々勢いが無くなり遂にはやんでしまった。

「工藤さんは、東京からきて向こうで一人も友達がいなか ったそうだ!
 みんな、仲良くしてやてってくれよな!」

って、友達いなかったんかい!
そこまで言うなよ戸村ティーチャーよぉ!
アンタそれでも教師か!?
いや、確かにアイツそんな雰囲気だけどさぁ…

戸村の失言により、誰もがそんなツッコミを入れてしまった。

[5] 東京童夢 2007/11/16 19:19

工藤美紗子。
確かに、室井の言うとおりセミロングで眼鏡っ子、
そして女子であった。

だけど、みんなが勝手に作ったイメージとは明らかに何かが違う!

そう、決定的に違うのだ。

セミロングだが真っ黒でだらーっと顔にかかった暑苦しい印象。

眼鏡だが黒ブチでレンズが大きく「この子本当に都会っ子なの?」というようなデザイン。それはまるで一昔前を思い出す。

そして性格。明るく振舞おうとしているけど周りからはそうは受け取られない可哀想な性格。

[6] 東京童夢 2007/11/16 19:19

全てが全て、可哀想な要素の詰まった転校生だった。

期待外れだ。
思っても見なかった展開。

まさかまさかのエピソードとはこの事を言うのだろうか?

待ち望んでいた転校生は可憐とはいえなく性格も良さそうじゃなく。

当然、苛められるだろう。
誰もが予期していたことだった。

[7] 東京童夢 2007/11/16 19:19

「本当のコトを言え。工藤のリコーダー盗んだやつ誰だ?」

ホームルームでのこと。
梅雨に入り、ジメジメとした天候が続いていた。

田舎道はアマガエルが本来の居場所をなくしたようで
ひっきりなしにゲロゲロと鳴き声をあげている。
雨が降っているのに暑い。湿気が多い。

汗っかきの戸村はハンカチで額の汗を隙あらば拭っていた。

そして転校生の工藤美紗子。

転校1ヶ月目にしてやはり苛められていた。
最初の自己紹介が自己紹介なので、庇う者は当然いなかったが。

入ってきた初日、誰からも声を掛けて貰えなかったし、昼食の誘いや移動教室の誘い、全てにおいて女子には無視され続けた。

まあ、あれでいて結構明るい性格なんじゃないの?
と一部思っていた男子もいただろう。

だけど、明るいあの仮面はあの時一度きりだったようで、後はほぼ無口。

[8] 東京童夢 2007/11/16 19:20


かつてC組で一番静かだった生徒、上村紀子さえも塗り替える新記録であった。

上村紀子は用事のある時は大抵喋るが、工藤美紗子はまったく喋らない!

たとえ、それが後々の自分にどんな悪影響を残すか知れていても喋らない!

そこまで無口なのも、無愛想なのも、ある意味珍しいのではないか。
なんか、ジトーッとした目でこっちを見てくるし。気持ち悪い!と不評もそのはず。

そんなこんなで、クラスメイト全員、美紗子には愛想を尽かしていた。

まあ、夢にまで見ていたよくテレビドラマとかである「転校生は美人!」
という現実に沿わなかったのが一番の原因ではある。

そして、とうとう彼女の所有物の窃盗まで起きてしまった教室内。
薄々と苛められてる感はあったもの、リコーダーを盗まれたとなると流石に戸村も黙っちゃいられない。

そこで、全く聞いていない(お喋りをしたり読書をしたり好き放題だ)クラスメイト全員を相手取り、
すすり泣く美紗子のリコーダーを盗んだ犯人を探し出そうとしていた。

「おーい、先生、正直に言ったら怒らないぞー」

いや、絶対怒るだろ。生徒達は確信していた。

それに、犯人のめぼしは大体ついている。
女子の中心核グループ、遠藤若菜、国村越美、脇昌子らだ。

だが、彼女達を検挙する者は誰一人としていない。

[9] 東京童夢 2007/11/16 19:20

戸村がしびれを切らして教卓をドン、と叩いた。

「いい加減にしろお前ら!仲間が困ってるんじゃないか!
 お前ら、それでも人間か!?」

「ハッ…笑っちゃうね」
「人間か、ってお前こそ人間かって話なんだけど!(笑」
「ドラマの見すぎだろーが」

せせら笑う生徒達。
美紗子はとうとう、本格的に泣き出してしまった。

黒ブチ眼鏡を取り外し、裸眼の顔が自分の腕の中にうずまる。
うぜぇ〜、誰も同情なんかしねーよ、との声がちらほらと聞こえた。

それにバン、と勢い良く立ち上がったのは何と、
上村紀子だった。

「いい加減にしてよ!先生の言うとおりじゃん!
 工藤さんのリコーダー盗んだ人、ちゃんと名乗りでなよ!」

水を打ったように静まり返る教室。
普段静かな紀子が大声をあげた事に、全員が驚き目を丸くした。
もちろん、紀子とて犯人がわからなかったワケじゃない。

[10] 東京童夢 2007/11/16 19:20


わかっている。
わかっているけど。
苛められてる子を助けたら、自分だって苛められるのは覚悟しなくちゃいけないんだ。
だけど、紀子は不思議とそんな事も忘れ夢中で叫んでいた。

結局、犯人の3人組は名乗り出なかった。

戸村はついに諦め、ホームルームを名残惜しそうに締めくくった。
生徒達は、ダルそうに、それぞれが部活や家までの岐路に向かって歩き始める。

教室には、二人の女子生徒が取り残されていた。

工藤美紗子、そして上村紀子だ。

「……あの、工藤、さん?」

普段呼びなれていない名前を、たどたどしく口に出す。
この二人、実は一回も喋ったことが無かった。

何故あの時庇ったのかは紀子自身にもわからなかったが、この後の気まずさは予期していなかった。
すると、美紗子の様子が一変した。

「上村さん、なんか、ごめんねぇ〜。迷惑かけちゃってさー。キャハハハ!」

紀子が先程の自らの行為を後悔した瞬間だった。

[11] 東京童夢 2007/11/16 19:21

アレ以来、何故か知らないが
紀子は変わり者、不思議っ子の美紗子と一緒に行動するようになってしまった。

元々友達づきあいの少ない、悪い、下手の3拍子が揃った紀子だったが、それ以上に要領の悪い嫌われ者の工藤美紗子とツーペアになってしまうなんて。

ハッキリ言うが、彼女が転校してきた当初は夢にも見てなかった事だ。

まあ、気が合うところもあるにはある。

紀子が美紗子を助けた衝撃の場面があった後日、紀子は美紗子に尋ねてみた。

「ねえ、美紗子ちゃん」
「なーに、のりちゃんv」

…不本意だが、思い切って「美紗子ちゃん」と呼んでみたらいきなりフレンドリーに
「のりちゃん」と呼ばれるようになった。

「…い、苛められてるって、感じないのかな?」
「え?」
「ごめん、気を悪くしたらゴメンね」

「苛められてる…」

考え深げに、顎に手をやる美紗子。

[12] 東京童夢 2007/11/16 19:21


考え深げに、顎に手をやる美紗子。

「そんな事ないし!美紗子、何ていうかぁ〜、東京ではす っごい苛められてたんだけど
 こっちの人ってすっごい優しいっていうかー」

…って事は、東京では更に酷かったんだね。
心の中で涙を流さずにはいられない紀子だった。

「でもさ、美紗子ちゃん、私とはよく話すけど他の人とはあんまり話さないじゃん?」
「ああ、何ていうか、美紗子のタイプじゃないんだよね(笑)」

わけのわからない発言に、またまた頭を痛める紀子であった。

[13] 東京童夢 2007/11/16 19:21

「でもね、暗いって言われても美紗子は気にしないよ!
 だって、そんなんで気にしてたら美紗子お父さんに笑 わ れちゃうもん!」

その言葉に、紀子はぐっとくる物を感じた。

今までの自分とは違う「何か」を持っている彼女。
要領は悪いかもしれないが、心や器は誰よりも大きい。

そう感じ取らずにはいられなかった。

だから、今もこうして一緒にいるんだと思う。

「お父さん・・・好きなの?美紗子ちゃん」

「うん、私にとって憧れのお父さんなんだー!実はね、の りちゃんだけに教えるけど、お父さんはね…」

[14] 東京童夢 2007/11/16 19:21



キーンコーンカーンコーン

いいところでチャイムが鳴ってしまった。
がっかりした紀子だが、まあ後で聞きだしても損はないだろう、と。

渋々自分の机に戻った。

工藤美紗子は、時々イラッとくることもあるけど皆が思ってるほど変わってない。

普通の、子だ。

ただ、あの時の「お父さんはね…」という意味深な言葉は気にかかっていたが。

どうにも、聞き出せない。
彼女のことだから教えてくれるとは思うのだが、彼女と別れた後にいつもその質問を思い出してしまっていた。

人間の記憶って、曖昧だ。

その内、いつの日かそんな疑問も紀子の脳内から消え去っていった。

[15] 東京童夢 2007/11/16 19:22

体育の時間だった。

外での授業で、9月に向けての体育祭の練習。

今は7月なので、夏休み明けたらすぐだから今のうちから練習しておけ、という体育教師のお達しだった。
ちなみに、その体育の先生は今日一日出張なのでC組の体育は自習だ。

暑い。
6月も暑かったが、7月に入って更に増したような気がする。
何たって照り付ける太陽のせいだろう。
ギラギラとまぶしくて、激しくて。
ここ一週間、日射病で倒れた生徒は数知れず。

そんな炎天下の中、C組女子は逞しく、体育祭で踊るソーラン節の練習をしていた。

色気なんてあったもんじゃない。
飛び散る汗、汗、汗……

まあ、それでも青春なんじゃないの?って感じで多少の心地よさは実感していた面々だった。

[16] 東京童夢 2007/11/16 19:22

体操服がビショビショに濡れることもお構いなしで、彼女達は必死に練習を続けていた。

「じゃ、休憩にしよっかー!」

一通り終えたところで体育リーダーが声をかけ、おつかれーっと女子生徒達はじょじょに散らばってゆく。

飲み物を取りに行く人、暑さで、もう死んじゃうよーとダレる人。
一同が様々な行動を取る中、紀子はいつものように今や親友ともとれる間柄になった工藤美紗子の元へ駆け寄った。

「ふぅーっ、あっついねぇ、美紗子ちゃん!」
「うん!マジでチョベリグ?ってか!」
…性格は相変わらずだ。

例の、遠藤若菜、国村越美、脇昌子とその仲間達が遠くで二人に冷たい視線を送った。
ヒソヒソ、話し声が聞こえる。

でも、平気だ。もう、慣れてしまった。

教室や、下校途中など、美紗子と紀子の二人組みを見る度に彼女達は変なモノを見るような眼で見てきたが、
もうそんな事を気にしていられない。

だが、その日はやけに酷かった。
先生がいない事もあっただろうが、わざと聞こえるように

「キモいんだけどー」
とか
「消えてくんないかな」
などと大声で嫌味ったらしく悪態をつく。

クスクスと、連られて周りの女子も笑った。

[17] 東京童夢 2007/11/16 19:23

「み、美紗子ちゃん。あんまり気にしない方がいいんだよ ね、これって…」

さすがの紀子も、これには胸が痛んだ。
すかさず美紗子に応答を求める。彼女の事だから、また励ます勇気的なモノをくれる筈。

「そうだよ!アイツら馬鹿女なんだから仕方ないって☆」

グループの目つきが途端に鋭くなる。こちらを物凄い形相で睨みつけてきた。
(言っちゃなんだが)その黒ブチめがねに似合わない清清しさでサラッと毒を吐く美紗子。

あれ?
なんか、いつもと違うよ、この人…。

いつも二人が黙っているからこそ、苛めるグループは調子に乗るのだ。

[18] 東京童夢 2007/11/16 19:23

だが、今日は何だか違った。

あの、工藤美紗子が、ウチらに、反抗した。

彼女達は、そんな屈辱感で、いっぱいだった。

「美紗子ちゃん、それは言いすぎだって…」
「えぇー、だって馬鹿に馬鹿って言って何が悪いワケ?」

美紗子は、今度は聞こえないよう、声をひそめて紀子の耳元で言う。紀子も囁いた。
「だって、あの人たち見てみなよ!すっごい殺気だってる もん…」

おどおどとしながら数メートル先の太陽よりもギラギラした彼女達をチラッと横目で促す。

「おい、お前」

しばらくして、つかつかと、遠藤若菜が歩み寄ってきた。
「なーに?」
まるで空気が読めない人のように、美紗子はニコニコとしていた。

「なーにじゃねぇよテメェウチらにさっき何て言った?」
「『アイツら馬鹿女なんだから仕方ないって☆』」
「何でそのままリピートすんだよ!そういうとこもムカつ くんだけど!」

[19] 東京童夢 2007/11/16 19:23

そうだよ!
マジむかつく!
死んじゃえ!

二人意外の女子の、全員の心が一つになったかのようだった。

紀子は本当に恐ろしくてたまらなかった。

でも、例え一つになろうがなるまいが、アイツらのやってる事は間違ってる。

そうだよ、変だよ。

クラスって、助け合うものなんじゃないの?

それなのに、何で、この人たちはこんな少人数をこんなに大勢で罵るわけ?

それで勝ったと思ってる方がおかしいよ。
大体、アナタ達が先に言ってきたんじゃない。

美紗子だって怒るときあるよ。私だってムカついたもん。
そうだよ、私達は間違っていない。

[20] 東京童夢 2007/11/16 19:24



ドンッ。

遠藤若菜が、美紗子の体を片手で突き飛ばした。
身構えていなかった美紗子はよろめいて痛い、と尻餅をつく。
大丈夫!?と即座に紀子が駆け寄った。

「お前ら、放課後体育館裏に来いよ!逃げたら承知しない からな」

「上村、アンタもだからね」

鋭い相貌で、ペッと地面に唾を吐かれた。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが校舎中は勿論の事、グラウンドにも鳴り響く。
と、同時に、「帰ろ帰ろ」とC組の女子は下駄箱に向かって歩き出した。

そして、若菜達も。

「見た見た?「痛いっ」だって!キモいんだよ豚が!」
「キャハハ、言えてる言えてる!」

[21] 東京童夢 2007/11/16 19:24

陽気に歩き去る彼女達の背中を、紀子はただ声を唇を噛み締めて見送ることしかできなかった。

眼には涙が溢れかえってきている。
支えている美紗子の体も、微かに震えているのがわかった。

片手でごしっと眼を拭き、泣きそうになっているのを悟られないようにする。

「大丈夫?美紗子ちゃん」
優しく声を掛けた。

「う、うん…大丈夫」

いつものように、ヘラッと笑い誤魔化すのかと思いきや。

言葉こそ平気そうな感じだったが、哀しそうな表情だった。
らしくないそれに、紀子は心配になってきた。

手を引っ張り起こしながら、背中についた砂を払ってあげる。

「ありがとう」
と言った美紗子のその声色も、元気が無かった。

まあ、当たり前と言えば当たり前だが。

普通の人なら、これで落ち込んでも仕方がない。
だが、彼女は「特別」という認識を持ってしまってるため、余計に心配だった。

[22] 東京童夢 2007/11/16 19:24

教室に帰ってからは地獄だった。

その後すぐ給食だったのだが、運悪く当番が若菜やその仲良しグループたちだったのだ。

お陰でパンは配られないわ、牛乳パックは潰されるわ、デザートの林檎は床にわざわざ落とされたモノをお盆にのっけられるわで散々だった。

担任の戸村も、見て見ぬフリなのか黙認してしまっている。

(リコーダー盗まれた時にあんだけ率先したのはどこのどいつよ!)

紀子は、そんな戸村にさえも怒りを覚えてきた。

女子達が工藤美紗子と上村紀子を苛めている。

何でも今日の体育の時間、取っ組み合いになったとか。

[23] 東京童夢 2007/11/16 19:24


そんな大袈裟な話ではないが、
男子にも、今日あった出来事が疾風の如く知れ渡ってしまった。

だが男子は、可哀想にと特段思うワケでもなく、むしろ面白がって事の成り行きを見守るようだ。

中心核の若菜達メンバーと仲の良い男子メンバーは同じく二人のことを完璧無視する事に決めたらしい。

都合悪く今日日直だった紀子のパートナーは、
その男子の一人だったのだ。

帰りの掃除や机の整頓、黒板消しなど何を言っても手伝ってくれなかった。

というか、空気のように扱っていて、見えてない、というふうに振舞う。

まあ、男子だから何を考えてるかわからないし。
そこまでが、紀子の許容範囲だった。

一人でもくもくと、さっさと部活に向かってしまったその男子の分の仕事を進めていると、
いつものように待ってくれていた美紗子が頬杖をついて話し掛ける。

「ねえ、のりちゃん。今日帰ったら何して遊ぼっかー?」

今日は何事も起こりませんでした、とでも言いた気に、のんきに喋っていた。

「遊ぶ…?」

忘れたのだろうか。

あの遠藤若菜達に呼び出しをくらっていたことを。
私がこんなに悩んでるのに、何でそんなに能天気でいられるの?

そう思うと、箒を握り締めていた紀子の手が怒りでワナワナと震えてきた。

何で、私ばっかり、こんな目に…。

[24] 東京童夢 2007/11/16 19:25

給食や日直の件もあって、思わず叫んでしまった。

「いい加減にしてよ!!もう、美紗子ちゃんなんて知らない!!」

紀子の怒りは頂点に達した。
箒をカラン、と投げ捨て、バッグを担いで乱暴に教室を出て行ってしまった。

どうしたの、と止める美紗子の声も聞かずに。

若菜達に見つからぬよう、大急ぎで昇降口を出て、早歩きで家路を辿った。

あんなに大声を出したのは、美紗子のリコーダーが盗まれた時、
クラスの皆に叫んだとき以来だ。そんな事を思い出しながら。

ふと、足が止まった。
もう、家はすぐ近くなのだが。

まさか、美紗子が自ら体育館裏に向かうとは思えないが、
もし帰り際に若菜達に捕まり連れて行かれてしまったら…?

私が行ったって何にもならないのはわかってる。

けど…

[25] 東京童夢 2007/11/16 19:25

何でだろう、さっき思っていたことと今の行動が裏腹だ。

内心まだ悔やむ心も残っていたが、知らずの内に紀子は学校へと引き返していた。

 急いで、体育館へ繋がる階段を駆け上る。
ハアハア、と息を切らし、普段誰も来ないそこで見たのは──

案の定、ぐるっと数名に取り囲まれる美紗子とその苛めグループだった。

気の迷いか、一瞬ビクッとして壁の影に隠れ、
紀子は様子を伺う。

「おらよ!いつまでも調子づきやがってよぉ!」
「生きてる意味ないからー」
「キャハハー」

何の抵抗もせず、眼鏡がずり落ちて、酷く傷だらけの美紗子の姿。

息が詰まる紀子。
飛び出そうとするも、体がガクガクと震えて動かない。

[26] 東京童夢 2007/11/16 19:25

--------------------------------------------------------------------------------
どうしたの…
動いてよ…!

動けって!!

尚も、彼女達は美紗子に殴る蹴るなどの暴行を加える。
美紗子は倒れこんだ。

それでも、顔をしかめて、美紗子はそれを精一杯受け止めていた。耐えていたのだ。

ギラッと。不意に、今まで黙って面白そうに見ていただけの遠藤若菜が、光る銀色の何かを取り出した。

──何だろうか、カッターナイフだ。

「ねえ…アンタのその髪、鬱陶しいよねぇ…」

怪しく、若菜の瞳が光る。

「切っちゃおうか?」

やめて!
紀子は、声にならない悲鳴をあげていた。だが、届かない。

[27] 東京童夢 2007/11/16 19:26



押さえつけられる美紗子の体。美紗子はくっ、と、顔を背けた。

美紗子ちゃん、何で抵抗しないの!?
いつもみたいに、何で…!?

思わず瞼を閉じようとしたその時、気付かぬ内に、紀子はその場に踊り出ていた。

「やめてよぉ!!」

押さえつける役の女子生徒を剥ぎ取り、美紗子を庇うようにして紀子は立ちはだかった。

「……のり、ちゃん…」
「は?何だテメー。逃げたんじゃなかったのか?」

ボロボロの美紗子だった。制服のYシャツは擦り切れ、顔には青い痣がいくつも出来ている。

こんな彼女、見たことない。
親友を、こんな風にしたコイツらを…許せない…っ!!

[28] 東京童夢 2007/11/16 19:26

「やめて!これ以上、美紗子ちゃんを傷つけないで!!」

ありったけの思いを込めて、泣き叫んだ。
その剣幕に、何人かがひるむ。

ハンッ、と鼻で笑った若菜は紀子と同じ目線にしゃがんで持っていたカッターをチラつかせた。

「ねーえ、上村さぁん。
私達、ここに来いって言ったよねぇ…?
 でもさあ、来なかったじゃん?
 そこにいる工藤さんはね、」

若菜が美紗子を顎でしゃくった。

 「ちゃんと約束を守ってきてくれたんだよぉ?
  その点、アンタは何?ただの弱虫じゃん」

そんな、美紗子ちゃん…
自分から行ったの…?

「若菜、コイツも一緒にやっちゃおうよ!」
「そうそう!まとめてやっちゃえって!」

キャハハーと懲りずに嘲笑するほかのメンバー。

その途端、紀子の腕が美紗子ごと押さえつけられ、冷たい刃先が触れ、頬にピリッとした感触を覚える。

[29] 東京童夢 2007/11/16 19:26



つーっ…と。

流れてきたそれは、血だった。
3cmぐらいの傷が、赤く、横ラインにひかれたのだ。

思わず、紀子は目をつぶってしまう。

「アハハ、いい感じじゃん?」
「お化粧だよ、不細工だからねぇ」

怖いよ…。それに、憎い…。
私に、もっと強い力があったら…。

でも、後悔はしていないよ。戻ってきたこと。
美紗子ちゃんを、守れたんだから。
いつも私に勇気をくれた美紗子ちゃんを、今、ここで守ることができたんだから。

美紗子ちゃんは、いつも笑ってた。
それに比べ、私は弱虫だった。

だから、これからはどんな屈辱にも耐えなくちゃいけないんだ…

[30] 東京童夢 2007/11/16 19:27



「おい」

誰のものかわからぬ声が、その場に響いた。
低い、聞いた事のないくらいゾッとする声だった。

突然の事に、キョロキョロと彼女達は辺りを見回す。
若菜の手も、止まっていた。それが、小刻みに震えているのを感じ取った。

「やめろよ」

再び、その声が聞こえた。
その場が静まり返る。

その主は、思いもよらぬ人物だった。

[31] 東京童夢 2007/11/16 19:27


工藤美紗子だった。

急だけど、静かに立ち上がり、紀子を後ろへと下がらせた。

殺気だった彼女は、眉間に皺を寄せまくりで、若菜達を睨み返す。

「な、何なのよ、アンタ…」

急に豹変した転校生を、怯えた眼でガクガクと見つめる若菜。

突如、美紗子の体が膨れ上がった。

二の腕の筋肉がじょじょに膨らんでいき、ブチブチッと青筋が顔全体を張る。
それに合わせるかのように、木の葉がザワザワと巻き上がった。

その間にも、どんどん彼女は変身を遂げていく。

「ぬうぁああああああああああ!!!」

何!?何なの!?
紀子にもワケがわからない。

ただ、目を見開いてその光景を見届けていた。

一方、美紗子の胸板はすっかり大きくなり、立派な腹筋もついて、容赦なく、着ていたYシャツがビリビリ破けていく!

オーラが周辺を取り巻く!
太ももにも筋肉がついて、あられもない姿…といっちゃなんだが、

彼女の体はなんと、ボディービルダーも真っ青の肉体へと変化したのだ!!

[32] 東京童夢 2007/11/16 19:27

巨大になったクラスメイトを見て、若菜は「ひぃっ!!」と悲鳴をあげた。

当然だろう。

その他の人たちももちろんだが、口を手で覆う紀子でさえ何が何だかわからない。

ただ、思える事は一つであった。

これが、美紗子ちゃんなの!?

呆気に取られている一同を差し押さえ、逞しい大きな腕が若菜の頭をむんずと掴む。

「っ!!!」

叫び声をあげる間もなく、ひょいと持ち上げられた若菜は数メートル先の茂みへと放り投げられた。

[33] 東京童夢 2007/11/16 19:27

ガッシャーン!!
大きな物音がして、土ぼこりがたって…

それが完全に消えたかと思えば、遠藤若菜の目を回して大の字でひっくり返っている情けない格好が視界に入った。

「ひっ……っ!」

美紗子が他のメンバーをぐるりと見回すと、きゃあああと彼女達は我先に逃げ出していった後だった。

「み、美紗子ちゃん……!?ど、ど、ど、…」

どうしたの、と言うつもりが上手く舌が回らない。
まあ、こんな光景を見ていたら誰もが理性がブッ飛ぶであろう。

いきなりマッチョになった工藤美紗子。

助けてくれた事はありがたいが…何!?
一体、なにが起こったというの!?

助けてくれてありがとう、とお礼を述べるよりも紀子の頭の中はそんなコトでいっぱいだった。

「ごめん、のりちゃん…私、今までずっと黙ってた…」

顔がすっかり青ざめて、言葉も発っせない紀子。

美紗子は、その低音とは真逆に、もじもじしながら恥ずかしそうに打ち明けようとする。

「私…私…

    スーパーマンなの」

ヘナヘナと座り込み、
呆気に取られる事しかできない紀子であった。

[34] 東京童夢 2007/11/16 19:28

そう、工藤美紗子はスーパーマンであった。

彼女が言うに、自分はこの街の防衛隊として東京から派遣されたのだという。

だが、東京より、こちらの方がずっと楽で、悪も全然はこびらない田舎だったから
つまんなくて。って感じらしい。

本来は正体を明かすのは厳禁なのだが、今回は親友が困っているところをどうしても見逃せなくて、と美紗子は涙ながらに告白した。(もちろん、今は元に戻っている)

尊敬する例のお父さんは、腕利きのスーパーマンで、全スーパーマンの中でも憧れの存在だったらしい。

それでか…

紀子は、あの時の事を思い出し、妙に納得と結びつきが繋がった。

「私、まだまだ未熟者なんだけど、お父さんを超えれるように頑張るんだ☆」

いやいや!全然未熟者じゃなかったよアンタは!紀子はそうツッコんでしまったという。

[35] 東京童夢 2007/11/16 19:28


7月の末。明日から夏休みだ、というときに、戸村からこんな通告があった。
「今日、工藤さん来てないみたいだけど、2学期から別の 学校に転校する事になったんだ。
 お別れの言葉を言えなくて淋しいけど、工藤さんとの思 い出を忘れないでくれよな!」

紀子は卒倒した。
そんな…!
美紗子ちゃん、何で、行っちゃうの…!?

何も、自分にそんな事言ってくれなかった。それなのに、何で…

「ズルいよ、美紗子ちゃん…」

そう窓を見ながらポツリと呟く紀子は、何故そういう気もないのに一筋の涙が頬を伝っているのかわからなかった。

こうして、工藤美紗子はさよならも告げず、行ってしまった。

でも、もう一度、会えるよね…。
美紗子ちゃん、楽しかったよ。

[36] 東京童夢 2007/11/16 19:28

あの転校生が来て変わった事といえば、ちょっぴり2年C組の雰囲気がよくなったということ。

上村紀子も、苛められなくなった。むしろ、若菜達ともつるむようになってきている。

グループだって、派閥だって無くなってしまった。
皆が皆、仲が良い。
それもこれも、あのスーパーマンのお陰なのだろう。

家に帰り、ベッドの上に横になった。
先日、彼女と一緒に遊びに行った時の写真を、写真たてのプラスチックを通して見つめる。

写真の中の二人は、とても良い笑顔だった。

(………また会いたい)

[37] 東京童夢 2007/11/16 19:29

プルルルルルルル

突然の携帯着信音。なんだろう?と思い、
紀子は訝しげに久しぶりにやかましく鳴り響くそれを取り出し、通話ボタンを押すと…

『あ、のりちゃん?』
「!?み、美紗子、ちゃん!?」

その声は、聞きなれた工藤美紗子のものだったのだ!
しかし、何故今になって・・・?

「美紗子ちゃん、急にどうして…」
『のりちゃん、次の任務が待ってるわよ』
「は?任務?」

「紀子〜なんかアンタ宛に変なモノ届いてるわよ」

[38] 東京童夢 2007/11/16 19:29


丁度、母親が不思議そうな声で紀子を呼び、一階からやってきた。

『のりちゃんに、緊急用のセットとか色々送ったからさ』
「は!?ちょっ…セットって!?何!?」

尋ねたい事が山ほどあったにも関わらず、ブツッと切れてしまった受話器。

何となく嫌な胸騒ぎがして、入って来た母親から茶色い紙袋の小包をひったくる。

厳重にガムテープが貼り付けられたそれを、
急いでビリビリと破り裂くと……

「………!!!」

紀子の体は固まった。

足元に、添えられていた手紙がはらりと落ちる。

『のりちゃんへ

 これから、二人で地球の平和を守っていこうね☆

         スーパーマン 美紗子より』

──彼女達は、今日もどこかで、この世界の平和を守っているに違いない。

(おわり)

[39] 東京童夢 2007/11/16 19:30



感想待ってます!!

[40] 東京童夢 2007/11/17 12:12

批判でもアドバイスでもいいです!
おねがいします。

[41] 迷駄文家5 2007/11/17 23:51

まず、同名のスレがあるのに気付きませんでしたか?
http://hon-4.bbs.thebbs.jp/1154106282/
ただ感想が欲しいだけなら、こちらに載せる方がよかったと思います。

もし、このスレには他人の者を載せるつもりはない、と言った個人スレ的な使い方をするのでしたら、随筆を利用した方がよかったですね。

御考えくださいませ。

[42] 東京童夢 2007/11/18 13:15

すみませんでしたー。
今度から気をつけまーす、

[43] 東京童夢 2007/11/18 13:18



そのスレとは、同名ですが…
いろいろな小説を書こうとは、皆様におっしゃっているのでは、
無く、私自身に言い聞かせていました。
ザに登録するつもりは、ありません。
感想がほしかったのです。
ご迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳ございません。

迷駄文家5様
小説の感想有難うございます。
これからも頑張っていきます。

[44] 似非右翼のクレペリンマン オビツ 2019/08/19 22:30 CV/yQU0V8qj

舟橋市 中山

[45] za 2019/09/02 10:49 OU/z5zGArXD

つまらないね

[46] 俊雄 2019/09/07 08:56 ザ-000,024,359号

パは原 2位伊達男サム 保糞卯手集う

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