前書き
この作品は「ゼロの使い魔」の世界観やキャラクターなどを元にしています。
またハリーポッターシリーズと同名のキャラクターも登場します。
ストーリーはなるべくオリジナルにしていきたいです。
鉱山主のグレゴリーがフェイウォンに無理矢理に迫っていた。嫌がる彼女の胴にグレゴリーの皺の入った手が絡まった時、
トシオの制止を振り切りリーはフェイウォンの元へ走り出していた。
瞬く間に衛兵達がリーに魔法を浴びせ彼は炎に包まれながら絶叫をあげた。その絶叫は間も無く事切れ彼は妹に近づく事も許されず死んだ。
トシオはリーの犯した“罪”の連帯責任としてアンダーアリーナへ行かされた。それは事実上の死刑宣告である。
アンダーアリーナはグリーンバーグの地下にあり、そこでは死ぬまで平民同士で闘わされるのである。グリーンバーグの紳士達は夜な夜な観戦に酔狂する、そんな貴族達の血生臭い娯楽であった。
「レディス アンド ジェントルメン!!今宵も脳無しの野蛮な猿どもがしのぎを削る!!」
司会者らしき人物が闘技場の中央で観衆の貴族達に叫ぶ。すると観衆達からの拍手が巻き起こった。
「今回のカードはこちらぁ!!トシオvsジョンチル!!」
トシオは控えの部屋から闘技場の中央へと行かされた。そして対戦相手と思われる男と対峙する。
「ルールは簡単。素手で死ぬまで殴りあってもらう。客席から投げられた武器は使っても良い。わかったな。では初め!!」
司会者はそういうと客席のほうへ走っていった。
トシオは対戦相手であるジョンチルから逃げる。
闘え、と客席から野次が飛ばされたり笑い声がする。対戦相手はどうやらここで闘うのが初めてではないらしく間合いを詰めてくる。
一応はガードをしてみるトシオだが、
ジョンチルに蹴りをいれられ体勢を崩された隙をつかれた。
そしてジョンチルはトシオの顔面を一発二発と殴った。
一発目は目に当たり、二発目で鼻の骨が折れツーンと衝撃が響いた。怯んだトシオを見たジョンチルはパンチの雨を浴びせ始めた。
トシオはたまらず崩れ落ちたが相手は獣のように躊躇なく殴りつけてくる。
トシオから客席の歓声が遠のいていく。
その時、なぜだか知らないが、闘技場に猛犬が何匹も入ってきた。
猛犬はジョンチルに群がり噛み付きはじめた。
「うあぁあぁ!!」
ジョンチルも噛み付かれたまらず声をあげている。
その時、トシオは思った。
ここは貴族達が平民の闘いを観て勝ち負けを楽しむ場所ではなく、単に平民が死ぬ様を貴族にみせるための見世物小屋なのだと。
誰が勝とうが負けようが、どの道最終的には死んでもらおうと言う事なのだろう。
その時に丁度、トシオの目の前にナイフが放り込まれた。トシオはナイフを握りしめ、猛犬やジョンチルを刺した。ジョンチルは死んだが、猛犬の牙の矛先は自分へと向けられた。
その時だった。「そこまでじゃ!!」と声が聞こえた。
1人の貴族が闘技場に入り、猛犬を風の魔法でまいあげ地面に叩き付けた。
「この少年を買おう!!金貨10枚じゃ!!」
その老人は、メイジの為に魔法石でできた剣や鎧をつくる工事を所有しているウエポン伯爵だった。
魔法石は魔法の力を宿すことができる。それを鍛えることにより、炎の魔力をやどした魔法剣や、光の魔力を宿した回復の鎧など、その利用法は未知数である。
トシオが目を覚ますとそこは見たこともない空間だった。フカフカのベッド。壁にはグリーンバーグの風景画などが掛かっていた。これが貴族の屋敷の中なのか。
そうトシオは金貨10枚でウエポン伯爵に命を救われたのだ。
トシオが目を覚ました事を使用人が確認すると、使用人は言った。「ご主人様がお待ちですよ。」
ウエポンは食卓で食事をしていた。
「君も食べるかね?」
「いえ、今はあまり」
「私が君を助けた訳を訊きたいのだろう。君、カッラサームスタンに亡命する気はあるかね。」
それはまさに願ってもみない事だった。
トシオはずっとカッラサームスタンに憧れを抱いていた。
「貴方はカッラサームスタン側なのですか。」とトシオが訊いた。
「私はグリーンランド側だが、その前に私欲を優先する。近い内にカッラサームとの間で戦が起こるじゃろう。私は武器の工事を持っているんじゃが、武器の需要を上げるためには戦は長引いて貰わなければならない。」
そういうと、ウエポンは羊皮紙で出来たノートを取り出した。
「ここには最新の武器の製法がかかれておる。まだグリーンランドも持っておらんようなものじゃ。これを持って亡命するのじゃ。」
どうやらウエポン伯爵は武器を売るために、戦になった際グリーンランドがあっさりとカッラサームスタンを潰す事を良しとしないらしい。戦を長引かせる為に敵の戦力強化を狙い武器の製法を流しているようだ。
グリーンランドでは平民の武装は禁止されているが、カッラサーム軍には武装した平民がいるという。平民といえど魔力を宿した武器で武装したならそれなりにメイジと闘う事も可能である。
「カッラサームの生活の方が良いじゃろうて悪い話ではなかろう、というよりこれは命令じゃ。わかるの?」
そんな事はわかっていた。断ればここで殺されると。
「もし亡命に失敗しグリーンランド側に捕まった場合、私はお前を盗人として処理するので失敗は許されぬぞ。この国の貴族達は平民の言うことなど誰も耳を傾けぬ。」
「しかし、どうやって?」
するとウエポンは布と魔法石で出来たペンダントを取り出した。
「この布を被ればお主は透明になり姿を隠せる。そして、このペンダントには風の魔力が宿されている。このペンダントの力で国境の壁を越えるのじゃ。」
トシオは消えていった鉱山労働者の仲間達の為にも、カッラサームスタンへ渡り武器の製法を渡すことを強く決意した。
トシオは丘を越え、山を越え、川を越えた。
何度もくじけそうになったがその都度消えていった鉱山労働者の仲間を思いだし足に力をいれた。そしてついに国境を越えた。
するとカッラサームのメイジがやってきて武器の製法の書かれたノートをトシオから取るとトシオを殺害した。
「若い女ならデミコモナー計画(>>70参照)のために生かすが、お前などいらぬ。」
カッラサームは亡命者のふりをしたグリーンランドからのスパイも懸念していたが、、そもそもトシオというたった1人の平民の命などどうでもよかったのだ。
人種平等を謳うカッラサームスタンだがやはり建前である。確かにグリーンランドよりは平民の生活は良いが、平民は貴族より下だという意識はここカッラサームスタンでもまだ途絶えてはいないのだった。
メイジは取り上げたノートを読むとそれを燃やした。
「こんな嘘か本当かもわからぬ魔法兵器を造っている間にグリーンランドは着々とカッラサームに攻め混む準備をしているだろう。時間と労力を浪費させるためのくだらないデタラメだ。」と一蹴した。
そう、そのカッラサームのメイジの言う通り、グリーンランドは今まさにでもカッラサームスタンという吹き出物のような国を潰そうとしているのだ...。
カッラサームには度々、情報を持った平民が亡命してくるが、こういった情報の中には嘘もあり最近ではそういった亡命者は不審者と見なされている。ウエポン伯爵からトシオに渡されたノートも出鱈目であり、トシオはウエポン伯爵に弄ばれただけなのであった...。
ウエポン伯爵も本当に情報を漏洩させたいのなら何処の馬の骨ともわからない平民にそれを託さなかっただろう。
トシオにはそれを考える余裕がなかったのだ。
そもそもカッラサームがグリーンランドから情報を得る場合、グリーンランド人だがカッラサーム側の貴族(コルベールのような)に依頼し情報を盗めばいいだけであり、
トシオの努力も死も完全に意味のないものだったのだ。
グリーンランド城においてグリーンランド国王とブルーランド国王代理や高官のもとで両国間の不可侵条約(>>68)が締結された。
そしてグリーンランドはさらに新たな条約を提案した。それはグリーンとブルーの両国間での一時的軍事同盟であった。
カッラサームがグリーンかブルーのどちらかを侵攻した場合には同盟国のために戦わなければならないという内容だ。これはカッラサームが地図上から消滅するまでが満期である。
「ブルーランドは以前にカッラサームに強力なメイジを殺害されたと言っておりましたな。我々はモモンガ教のグリーン派とブルー派ではあるが、平等なる民こそを賛美すべしという不信心なカッラサームに比べれば遥かに親しい。両国にとって悪いものではないでしょう。」
これにはカッラサームを牽制する狙いも少しはあったが、グリーンランドはあくまでブルーランドの出方が気になるのだ。カッラサームはグリーンランドにとっては単なる破落戸の集いである。自国領土に10年間もカッラサームの存在を許してきたブルーランドが、本当にカッラサームを共通の敵と見なしているのか確めたいのである。
「私は国王代理としてブルーランド国王の不可侵条約に賛同するとの意志を伝えるために来ました。しかし、ここからは代理としてではなく私個人として発言させて頂きたい。カッラサームスタンの人間はもともとはグリーンランドの貴族の出やグリーンランドの圧政に苦しんだ平民といった人々でしょう。ブルーランドとしてもどうにかしなければならないという思いは同じですが、もともとはそちらの責任では。」
グリーンランド国王が言う。
「お前らこそ その負け犬どもに餌をやり手なずけ、コチラに揺すりをかけておるのではないか?!」
大臣「王様、めでたい和平の場ですぞ。」
「失礼いたしました。グリーンランド国王様。軍事同盟の件、前向きに検討させていただきます。」
ブルーランドの代理や高官達は帰っていった。
ここはブルーランド王宮。
国王ルーク14世にグリーンランドから帰った高官達が軍事同盟の事を話した。同盟国が有事の際は同盟国も軍事支援をしなければならないというものだ。
「その一時的軍事同盟の話、許可しよう。」
ルークは言った。
「よろしいのですか。」
グリーンランドから落ちぶれ貴族や圧政に苦しんだ平民はブルーランドに亡命した。彼等のグリーンランドへの憎悪を利用出来ると考えたブルーランドが彼等の存在を許し建前上は自立した傀儡国家にしようとした。これがカッラサームの成り立ちである。
そしてブルーランドはカッラサームを積極的に支援し内政にも干渉した。
宗派の違いゆえに古来から小競り合いを続けてきたブルーランドとグリーンランドだが、カッラサームという新勢力の誕生によりグリーンランドの感心がそちらに向くかと思われたがグリーンランドはあくまでブルーランドが糸を引いているとみていた。
確かに当初はそうであった。
しかし10年という建国から短い期間でカッラサームには元グリーンランド人の強力なメイジが出現しはじめた。彼等の自我は高まりブルーランドの言うことを聞かなくなり、
ついにはブルーランドにも牙を向いたりデミコモナー計画を独自に行うなどの行動をしだした。カッラサーム人としての自我を強め独立国家としての色を強めようとしていた。
セルゲリアではメイジの強さがそのまま武力と直結する。カッラサーム人の強力なメイジをブルーランド本国での爵位を餌に引き抜こうと考えたがカッラサームの猛者は拒否した。
もはやカッラサームはブルーランドの忠実な僕では無くなっていたのだ。
しかしブルーランドもカッラサームを滅ぼそうと思えば滅ぼすことは可能である。ブルーランドに存在する隠れたメイジ(武力)であるシークレットメイジ達を使えば...。だがあえてそれはしないのだ。
カッラサームが自我を強めた今もなおブルーランドはカッラサームが思い通りに動くと思っている。もともとグリーンランドからの落ちぶれが多かったカッラサーム人の憎悪感情はブルーランドよりもグリーンランドに強く向けられており、何よりもブルーランドが彼等 亡命者を助けた恩義があるのだ。
ブルーランドは静観し、カッラサームがグリーンランドと戦うのを待っているのである。グリーンランドの戦力を見極める機会を伺っているのだ。
「しかし、ルーク様。軍事同盟を飲めば我々もグリーンランドの見方として戦わねばなりませんぞ。いつまで譲歩されるのですか。」
「グリーンランドとカッラサームは戦になるであろう。同盟といえど、戦の際はあくまで支援程度だ。適当なメイジを差し向ければ良い。それにその同盟を拒否したならグリーンランドのブルーランドへの疑心をますます強めてしまう。我々はグリーンとカッラサームが戦になるまで待っていれば良い。」
ブルーランドはグリーンランドとカッラサームが戦になり潰しあいをするのを待っていた。またブルーランドはグリーンランドにも自国のシークレットメイジ(隠れた戦力)があることを懸念していたため、グリーンランドの戦力の底を確認する意味でも両国間の戦を強く望んでいた。
5
ここは王立魔法学院。謎のカッラサーム人 エリオットによるアリアン男爵家一家皆殺し事件と王立魔法学院教師コルベールの死の件で現場にいたサマラン、ルイズ、モンモランシー、ギーシュ、マックは事情検分のために王都に向かおうとしていた。
「ちょっと、サマランあんたその剣...必要?」ルイズが怪訝そうに言った。
サマランはルイズから進呈された剣を持っていた。
「剣の声が聞こえたような気がしたんだ。それにお前らだって杖を持っていってるじゃないか!魔法の使えない俺にとってはこれが杖なんだい!」
ルイズが一瞬 白目を向いた後にサマランに言った。
「お ま え ら じゃないでしょ!私はご主人様!」
「それにしても剣の声..?もしかしてそれって魔法石で出来ているの?」とモンモランシーが興味ありげに言った。
「えぇ。元々、うちの公爵家のものよ。でもどんな魔力が込められているのかサッパリわからないから、サマランにあげたってワケ。」
「おーい。みんな準備ができたぞ。」向こうでマックが手をふっている。呑気なものだ。
一行は王立魔法学院から馬車で南へ出発した。
>>106
※訂正
またブルーランドはグリーンランドにも自国のシークレットメイジ(隠れた戦力) のようなものが あることを懸念していたため、
舟橋市 中山